INTRODUCTION

of corporate cases and initiatives

取組事例紹介

05
2022.03.29
タケシンパッケージ株式会社 代表取締役社長/企画営業部部長 新谷 啓一郎 氏
PROFILE
高校卒業後、大学へ進学するもすべての時間をアマチュアバンドの活動と派遣労働に費やす。1991年入社、1993年企画営業部長就任、2000年に代表取締役企画営業部長に就任。
2022年株式会社三共パッケージ代表取締役を兼任し現在に至る。社会貢献できる企業づくりを目指し常にチャレンジし続けている。また、岡山県ビリヤード協会副理事長。日本初のビリヤード教師として15年以上高校で指導するなど、精力的に活動中。
インタビュアー:天野博文
高梁川流域クロッシング
プロジェクトリーダー
株式会社クラビズ 新規事業開発室 室長
Takeshinpackage co,.ltd
自社の技術を守りながら、惜しみなく開放もする
信頼できる相手と共に何が生み出せるのか。

段ボールメーカーの下請けとしてスタート
お客様の要望に応えることで自社の強みを確立

御社の成り立ちからお伺いさせてください。昭和63年創業とのことですが、当時から大型の段ボールを製造されていたんですか?

大型ケースの製造は私が営業を始めた1993年頃からです。創業者は私の母親ですが、私が学生だった17〜18歳の頃に立ち上げた会社で、ある段ボールメーカーの下請けからスタートしました。
ただ、完全な下請け仕事だったので、このままでは経営としていかんだろうと、1993年に企画営業部長着任と同時に独自の営業活動を始め、自社での独立した経営に切り替えました。自分自身も自社初の営業マンとして営業活動を経験し、下請けでは味わえなかったやりがいを感じられるようになりました。やがて会社の器も大きくなり、毎日楽しく仕事をさせて頂いています。

ご自身で営業をしていく中で、大型の包装資材を扱うお客様が狙い目だと考えられたんですか。

当初は限られた設備しかなく、シンプルな工業用のパッケージぐらいしか製造ができませんでした。製造番号や部品番号が入る程度なので印刷に拘らないですから。そうして工業用の段ボールをもっとやろうとなると、とにかく他社との差別化が必要なことに気がつきました。最終的に、我々がどういうスタンスで会社を運営していけばいい方向にいくか、ということを考えた時に「大型のケースに特化すること」を売りにしていくのがベストだと判断しました。

新規開拓を模索する中、何を強みにすべきなのかがわかってきて、進む方向を定めて来られたということですね。

基本的には、お客様の要望にお応えしていたら、自然と現在の形になりました。当初は段ボールの製造も、プロフェッショナルと言えるようなレベルではなかったし、いろんな企業を回って、その企業で困っていることがあったらなんでもやりますというスタンスで。段ボールに固執することもなく、自動車の部品を作ったり、金属製のパレットも作ったり、いろんな分野に挑戦してきました。でもやるからにはプロのレベルの仕事ができないと勝負にならない。その辺のプライドだけはしっかり持っていたので、チャレンジを続けながら、どの分野でもそれなりのレベルに押し上げながらやってきました。
今はその積み重ねが生きているので、大概のことには対応できる体制は取れています。

ビジネスに捉われない姿勢で
被災地へプロの技術を提供する

現在の御社の主力商品は大型の段ボール梱包資材、包装資材ですが、そのほか、パーテーションやパレットもHPで拝見しました。お客様は主にどのような分野なのでしょうか。

本業としての主力は工業系の大型のパッケージで、お客様は自動車関係のメーカーさんや産業系です。
一方で、パーテーションは避難所用の間仕切りが発想の起点にあるため、我々はビジネスと捉えておらず、無償で提供するスタンスであるべきだと思っています。阪神大震災の時には、ペーパーハニカムという特殊な材料をただの衝立として、ガムテープで張り合わせて周りを囲む、というだけのものだったのですが、そういうところからどんどん進化をして今の製品※になりました。
ところで、避難所で使うパーテーションは全員に対して一つづつないと配れないというのをご存知ですか?使う人の人数に合わせた必要な量を100%満たしていないと、1枚たりとも組めないんですよ。
※Be BOX Partition(ビーボックスパーテーション)……より快適にプライバシーを保護することを目的に開発された簡易間仕切り。https://takeshin-pk.co.jp/bebox

一つでも足りないと使ってもらえないんですか。

我々からすると、より困っている人が使うべきではないかと考えますが、それは公共のルールとして不公平があってはならないということらしいです。それを解決する手段として開発したのが、Be BOX Partition(ビーボックスパーテーション)です。1個で使えば中に1人入れます。ですが、2つ並べて間に空間を設ければ、実際使用しているのは2つなんだけど3人が入れますし、その幅を広げていけば、中に5人入ることもできますよと。現場に合わせた組み合わせをしながら、自由自在に組み上げていくことができるようなパーテーションです。
1人1個という条件でも、考え方次第で対応できるということを、プロの商品で実際に体験してもらう、そういうコンセプトで開発しています。

プロの発想と技術があれば、現場の運用にもちゃんと対応できる。御社の強みは、お客様の要望に対して企画ができるというところも大きいですね。

ある難聴者の暮らし辛さを知って
新たな商品開発の種を見つける

最初から狙っていなくても、真摯に応えていたら結果的にビジネスになるということもありますよね。こちらの、吸音材※はどのようなことがきっかけで誕生したのでしょうか。

7〜8年ほど前に、リフォームの過程を紹介するテレビ番組を見たのがきっかけです。難聴者が暮らす家で、音の反響を抑えないと人の声が聞き辛いということで、寄木細工のようにいろんな木を組み合わせて壁を作るというものを紹介していました。その放送を見ながら、音の反響を抑えられたとしても、壁面の固い木にぶつかると怪我をしそうだなと思って、じゃあ我々だったらどういうものができるだろうか、どんな形になるかなと思ったのが最初です。
その頃、自動車メーカーの受注ボリュームが著しく落ち、我々も売上が激減した時期がありました。同じような状況にある自動車部品メーカーの社長さんと話をして「空いた時間で一緒に何か考えましょう」と、お互いの会社からスタッフを集めてプロジェクトチームを作りました。そこで、反響を抑える資材の開発をやってみようということになり、週に一回のミーティングを重ねました。手作りで試作も進めていましたが、先方が撤退することになったので、単独で開発を進め数ヶ月で最初の特許を取りました。そこから約7年経って、ようやく去年の11月から、小規模ながら販売を開始しました。この4月から新しいスタッフが入ることもあり、これから大々的に販売していこうと計画中です。
※CASSETTE WALL & CEILING(カセットウォール&シーリング®)……デザイン性に優れ簡単に着せ替えできる、プロユースにも個人ユースにも応える、機能性吸音材。https://takeshin-pk.co.jp/cassettewallceiling

こういった製品ですとお客様も今までとは違いそうですね。どのような分野になるのでしょうか?

個人のお客様もありますし、工務店さんが新築やリフォームの時に資材として使っていただいたり、ホテルや全国展開しているような店舗、あと最近ですとオンライン会議の場でも吸音材を使用することがあります。簡単に設置できるだけでなく、ビジュアル的にもいろんなパターンができますので、そういう意味でもちょっと面白いものができたと思っています。

こういった面白い見せ方は、御社の中で企画されているのですか?

これからはデザイン関係の方々ともコラボレーションしながら様々な商品が増えていくと思います。また、住宅メーカーさんの内装や家具の提案などをされる立場の方に使ってもらって、お客様視点に立った要求に応えていきたいとも考えています。我々がデザインしたものを提案するだけではなくて、お客様の要望にも応えるというかたちの商売をすれば、デザインをする人間や製造する人間にとっても、やりがいが生まれてくると思います。そこをできるだけ多くの社員に経験して欲しい。受注した商品をコンスタントにつくるだけではなく、いろんな人が積極的にコミュニケーションしながらチームで取り組んでいける仕事を増やしたいと考えています。

協業は当たり前のようにしてきたこと
信頼できる相手と共に何が生み出せるのか

先ほど、吸音材の開発に至る際、お取引先の部品メーカーさんとお互いに苦境に陥った時をきっかけに、コラボレーションを始めたというお話がありました。社外との連携、外部との協力や関わりで事業の転換点になったとか、何かのきっかけになったことはございますか。

自分たちにできないものを他社に求めるといった協業は、今までにも大小当たり前のようにあったことなので、今更言うようなことでもないとは思います。でもそれがなぜ今あえて言われているのか?と。これからの考え方として、相談しただけでお金が動くみたいな形になっていると、オープンイノベーションになりにくいと思います。どちらかといえば、私がさっき話したような、たまたま取引先の社長さんと話をした、あくまでも友達付き合いみたいなものからスタートする。そういうざっくばらんに、何かみんなで知恵を出しあえるような、初めから利益を第一に考えるのではないスタンスで、物事を進めていくとうまくいくかもしれません。利益が見込めなくても楽しそうならやりたいと思うこともありますし、そういう可能性も含めて出会いや繋がりをたくさん増やしていけばいいのではないでしょうか。

例えば、ボランティアである製品を開発するために、完全にビジネスの要素を乗せないということだったら、多くの企業がいろんなものを投じてやろうとする姿勢を持っていると思います。ただ、A社、B社、C社が絡んでやりましょうとなった時に、利益配分をどうするかとか、そこの主張をし始めると、誰の仕事が尊くて、誰の仕事が小さいものかを決めるようなもんでしょう。最終的にできたものをどういう扱いにしていくか、いかにトラブルなく進めるかが今後の課題になると思います。
いろんな企業のノウハウをできる限り公共のものとして出していけるような、企業側としてはそこにはあまり利益を求めない。どちらかというと、みんながいい思いができるように社会貢献としてやっていくようなスタンスが一番取り組みやすいのではないかと思います。

守るべきものは守りながら、惜しみなく開放もする
教育現場との連携でさらに可能性を広げたい

我々が開発したこの吸音材は、壁の表面を交換しながら使うというシステムそのものを特許にしているんですが、その部分は自分たちのものとして守りたい。でも、このカバーなんかは規格にさえ合えばいろんな材料で作れるし、いろんな用途に使えます。当社ではこれをカレンダーにしたり、ネームを入れたり、カップフォルダーをつけたり、芳香剤をつけたりとかもしています。
つい先日も建築メーカーに行きましたが、小さいフィギュアが流行っているので、そういうものをここに並べられるようなものができないか、というお話をいただきました。当社が直接作らなくても、こういうパッケージ化された壁面を利用して、その規格に合わせた製品を作ればできるわけで、いろんな製造業の方に取り組んでいただくのもいいと思っています。

御社の開発された独自商品の、基礎の部分はあくまで自社の特許として、用途は広く開放して、さまざまな意見を取り入れながら、その価値を高めていくような。

でも、売れなければ全く意味がないと思ってますから、もちろん品質は重視します。完全にオープンというわけではなく、ライセンス契約、この商品は公認ですとか、有償無償にかかわらず、そういう方向も面白いと思います。

今後、取り組む予定ですが、デザインや用途開発を学生が学びながら考えて、その過程でデザインの勉強もできたり、ビジネスとして商流に乗せるために、どういったことが必要なのかということも学べたりする場を作りたいと考えています。このアイディアを元にどういう会社が設計してくれるのか、どういったハウスメーカーさんが資材として使ってくれるのか、販売するにしても、どんな店舗だと置いてくれるのか、いろんな部分を詰めていかないと物事は達成されないでしょう。学生にとっても我々にとっても大きな学びのチャンスです。我々の技術を活用してもらいながら、教育のシステムにうまく企業として連携したいと考えています。

協業する上での必須条件はプロであること
効率と利益のバランスを見極める

協業や連携をする上で、相手選びのポイントのようなものはありますでしょうか。

プロであることでしょうか。そういった意味で相手は選ばざる得ないです。何をやるにしても、プロがやれば適切なコストがかかるだけであって、無駄なコストは決してかからないものです。
この吸音材を作るための機械も自分で設計して作っていますが、現実的にはプロに頼んだ方が安くできるケースはありますよね。よく、DIYで安くあげようとして、素人がやると結果的には材料費が高くついてクオリティが落ちたりして、実際はプロに頼むほうが圧倒的に安いです。プロが使う道具や材料、技術などがあって仕事になっているわけで。
我々も製造のノウハウを得るまでは自分たちで全部やりますが、ある程度知識の蓄積ができると、あとはしっかりできるところに頼んだ方が効率的だと考えています。

絶対に不可欠なノウハウは自社で抑えておいて、それ以外のところは、外部へ切り出してしまった方が安くて効率も良い。自社で蓄積していくべきことと、外に出してもいいところと、そこが明確にされているのかもしれないですね。

内製化するのか外に出すのかを判断する基準は、任せるべきプロなのかどうなのか見極めながら進めていく。また、その付き合いは友達と一緒で、信頼できる人と長くやっていけることが一番楽しく有意義な関係性だと思います。我が社はそういう基準で取引先を選んでいます。
だから気に入らない仕事ははっきりと断ることができるし、割とその辺はわがままに進めていますけど、気がつけばしっかりとお互い支え合えるようなパートナーシップができていると思っています。

新たな試みや企業としての社会貢献
余剰人員で+αを生み出したい

創業から35年ですが、タケシンパッケージさんのこれからの展望はなんでしょうか。

余剰人員を作ることです。本業の、生活していくために必要な部分を成り立たせる人員だけではなく、+αを生み出す人たちを抱えていきたい希望があります。

それは、少数精鋭で精一杯ではなくて、ある程度の余裕を持った体制で臨みたいと。

利益を追求することや日々の仕事に追われるだけではなく、ある程度、余裕を持って今度はこんなことにチャレンジしようとか、地域に貢献できるようなことはないかとか、企業として社会に喜んでもらいたいという気持ちが強くあります。その部分を先頭切って、アイディアを練って企画する人がいる、そしてそれを軌道に乗せる部隊があって、実際に現場で作る人がいて、売るために戦略を立てる人、それをしっかり売って歩く人…… 持ち場持ち場での人材を確保することを理想として目指しています。いかにいろんな新しいことや楽しいことができるメンバーを増やすことができるか、それを養っていくだけの余裕が出せるのかが課題です。

また、企業としても色んなシーンで社会や人と繋がって、いい会社だよねとさらに知ってもらえる方向にいけるといいなと思っています。自分たちが働いている会社を誇りに思える、私はここで働いていると自慢できるような会社にしていきたいですね。
OTHER

corporate cases and initiatives

その他事例

↑pagetop