INTRODUCTION

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取組事例紹介

カモ井加工紙株式会社
PROFILE
1923年「カモ井のハイトリ紙製造所」を創業。1980年代の高度経済成長期には、建設業や車体の塗装で使用される和紙マスキングテープを発売。2008年には大人気商品の「mt」がグッドデザイン賞を受賞。工業用製品・雑貨・文房具の販売に加え、ご当地限定品や街のランドマークとのコラボにより若い女性を中心に愛されている。2023年に創業100年を迎える、岡山県倉敷市のリーディングカンパニー。

左:専務取締役 谷口 幸生 氏
右:取締役・コンシューマー部 部長 高塚 新 氏
インタビュアー・ライター:杉原未来
撮影:難波航太
大人気マスキングテープ「mt」は、お客さまとの交流から。地域連携が拡大し続ける理由

マスキングテープでmtを知らない人はいないほどの人気を誇るカモ井加工紙さんですが、もともとはハエ取り紙工場からのスタートだったそうですね。

高塚
弊社は捕虫紙の製造工場から創業し、「紙を扱う」「ペタペタくっつく」という製品にこだわり、2023年で100周年になります。高度経済成長期には工業用のマスキングテープを作り始めました。車の購入の増加や、高層ビルの建設も相次ぎ、車の塗装やビルの建築用の養生テープの需要が伸びたのです。
そんな中、2006年に「マスキングテープファン」だという東京の3人の女性の工場見学を受け入れたことからお客様との交流が生まれ、文具や雑貨向けのマスキングテープ開発が始まりました。

新しくmtの事業をスタートしたキッカケはありますか?

谷口
「何か新しい事業をしなくては!」と考える意識が社内に根付いていたため、mt事業をスタートできたのだと思います。捕虫紙中心の事業を展開していた時代は、性能の良い網戸や殺虫剤が開発され、捕虫紙がいずれ廃れることは弊社のOBたちも予測していました。市場の縮小に伴い、我々の持つ技術・販売チャネルで何ができるのか必死に考えた過去があります。ひとつのキッカケがあったというよりも、「新しい事業を常に考える」という重層化された意識が根付いているからこそ、装飾用マスキングテープ「mt」の商品開発も始まったと考えています。

「たかだかマスキングテープでしょ?」といわれた時代をバネに大飛躍

地域との連携で様々なコラボレーションをお見掛けしますが、当初の苦労や課題などは、どんなものがありましたか?

谷口
何をするにも初めてで、苦労することは沢山ありました。例えば、岡山城にmtを貼る提案の際、許可がなかなかおりなかったという苦労がありました。場所にもよりますが「去年やってないから、前例や実績がないから、承諾できない。」というお断りがよくありましたね。また、広島ではフェリーターミナルのウッドデッキ全面にmtを貼ったのですが、台風の影響ではがれてしまうトラブルがあり、急遽広島の現場まで走ったこともありました。

そういった苦労や課題をどうやって乗り越えたのでしょうか?

高塚
ケースバイケースですが、許可が下りない時には過去の実績を見せ、根気強く説明を続けました。貼ってはがせる、原状復帰できるという点を理解してもらうためです。古い建物、例えば京都の廃校に貼っても何も問題なかったといった実績を提示して説明をします。

今も苦労していることや課題に感じていることがあれば教えて下さい。

高塚
公共の施設とのコラボの際に、物販はダメと言われることがしばしばあります。施設利用を申し出た時からコラボNGになる場合も。公の施設は指定管理者等に直接説明し、理解していただいた経験もあります。
谷口
マスキングテープを販売している企業が、たかだか小さなマスキングテープを売るためだけに大きな会場を借りるなんて理解できないのかもしれません。ただひたすらに「お客様に驚いてもらいたい」という気持ちから、どんな場合も地道な努力で乗り越えていきました。

1+1=無限大の発信力。どんな相手とでも相性抜群にくっつくマスキングテープの底力

他社と協力したからこそ実現できたことを教えてください。

高塚
良い相手や地域とコラボすることで、我々だけでは発信できないところまで発信力が及ぶと感じます。例えば、地域のサポートショップでは、お店ごとのファンがいます。mtと組むことで、コラボレーションは驚きに変わり、心が動くと人々は自然と発信してくれるのです。我々がいくら頑張ってSNSを更新しても限界があります。他社との協力は、ある部分においては、一定のシナジー効果があると考えています。

他社とのコラボレーションをすることによって得た大きな成果はなんですか?

高塚
「mtが地域とコラボしている」という印象が強いのは、JR西日本さんのディスティネーションキャンペーンの効果です。2016年のキャンペーン時には、大原美術館を、翌年には岡山城にもmtを貼りました。我々単独では決して実現できなかったことです。

今後の活動の課題や、今後一緒に活動したい企業があれば教えて下さい。

谷口
今後、mt リメイクシートや、mt CASA(カーサ)という、インテリア等のリメイク向けワイドテープの売上を伸ばしたいと考えています。そのためにコラボレーションしたいのは、古民家や空き家、地方のさびれてきた商店街などです。「もっと若者が入って魅力を発信すれば良いのに」という場所にリメイクシートや、 CASA(カーサ)を使ってほしいと考えています。
高塚
インテリアや小物にも簡単に貼れるうえに、剥がすことができます。古民家や空き家、商店街などの地域資源をいかした活動にも結果としてつながるかもしれません。

すべてはYESからのスタート!失敗を恐れないチャレンジ精神がイノベーションの源流

カモ井加工紙様の企業風土や企業理念と、地域とのコラボレーションとでは、リンクしている考え方が何かあるのでしょうか?

高塚
弊社の会社案内には、1ページ目に「YESからのスタート!」と大きく書かれています。mtの事業は他に前例がないからこそ常に挑戦中といった状態です。
谷口
失敗したらやり直せばいいんです。マスキングテープを貼って、またはがすように。考えて、書類にハンコを押して、それから失敗すると動きが重たくなる。「やりながら作り上げる」ことを意識しています。

さいごに、新しい企画や商品等があれば少しだけ教えて下さい。

高塚
2023年、カモ井加工紙は100周年を迎えます。それに際して、100周年記念イベントを全国で開催する予定です。九州から北海道まで、日本全国を巻き込んだイベントとなります。
谷口
各地でイベントをするとなると、全国のファンの皆様が県をまたいで集まってきて下さいます。ファンの皆様の喜ぶ顔を見るのが何より楽しみですね。

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