INTRODUCTION

of corporate cases and initiatives

取組事例紹介

コアテック株式会社 代表取締役社長 藤井 茂 氏
PROFILE
1972年、財団法人岡山地方発明センターの事業部門を株式会社機器開発工業として独立し、主に切削専用機や自動化設備を手がける。1989年にコアテック株式会社に社名を変更し、現在では「FA設備事業」、「エコロジー事業」、「自社商品事業」 の3本の柱を持つメーカーとして国内外を問わず事業を展開している。地域経済成長を牽引する中核的存在として、2017年12月「地域未来牽引企業」に選定。
インタビュアー・ライター:杉原未来
撮影:難波航太
挑戦する気持ちを大切に。「地元企業」から羽ばたくものづくりの未来

スポーツタイプの小型電気自動車である「eFalcon」を企画されるまでの経緯を教えて下さい。

2010年にEVを学ぶために、岡山県内の10企業がSIM-Driveという会社のEVの開発事業に参加しました。その後、2011年に岡山県内でおかやま次世代自動車技術研究開発センター(OVEC)が発足し、3年間を1期という区切りにして6年間(2期)自主的な研究活動を続けていたのです。
4年が経過し、「どうせ研究するならマイクロEVを作りたい」と考え、2期目も有志を募って研究会を続けましたが、同時期に世間ではマイクロEVの流行が一時的に下火になっていきました。数々の大手自動車メーカーが実証実験を行う中で、EVづくりの難しさが浮き彫りになり始めたのです。

そもそも、岡山県の自動車関連会社は部品づくりに強みを持つメーカーがメイン。「EVづくりは大手が既に手掛けており、開発にも相当苦労しているのだから、中小企業は手を出さない方が良いのではないか」という風潮もあったのです。

そういった、技術的、精神的な逆風の中でも、当社はEVに将来性を感じ、製作企画を温存していました。研究会発足から5年が経過した時、補助金の活用が決まったことも追い風となりeFalcon第1号機の本格的な開発に乗り出したのです。

EV開発における既存知識や実績などがある状態での始動だったのでしょうか?

前述の研究会にて、インホイールモーター(各タイヤに設置される形式のモーター)の開発をした経験がありました。2013年には、開発した部品やモーターを搭載した「OVEC-ONE(オーベックワン)」という試作EVがナンバープレートの交付を受けており、その技術を継承した企業にも協力いただき、eFalconの初号機に岡山県内企業が開発したインホイールモーターを使用しています。岡山県内の5社で結成した有志連合で開発し、得意分野を分担しながら研究開発に取り組みました。モーターやインバーター(モーターの駆動制御をする装置)を弊社が担当しており、将来を見据えてモーターは量産を想定した作りになっています。そういう意味では、モーターやモーターを回す技術はあったものの、自動車全体を開発するのは初めての挑戦でした。

「挑戦」するからこそ生まれた苦労と、大きな成果

eFalconの開発に伴い生じた「苦労」や「課題」、それらを乗り越えた方法を教えて下さい。

eFalconの試作段階で、「特定の部品を少量欲しい」という場合に課題がありました。自動車メーカーの業界では大量生産が基本のため、部品も大量発注が当たり前です。一般的な部品業者だと、出荷可能な最少ロット数が決まっていることがほとんどで、「この部品の最少ロットは10,000個からです」と購入を断られる場合も。加えて、「自動車メーカーでないと手に入らない部品」もありました。
そんな時、有志連合の企業が部品を少数から提供してくれるなどして、部品調達を応援してくれたのです。複数の他社と協力していたからこそ、様々な面で課題を乗り越えることができたと感じています。

eFalcon製作に伴い生まれた「一番大きな成果」はなんですか?

2021年12月のナンバープレート取得は大きな成果だと思っています。7〜8回の改良を重ねた末、「側車付き軽二輪」というカテゴリーでやっとナンバープレートの取得を実現したからです。
取得要件は「バータイプのハンドルであること」「跨ることができる形状のシートであること」「車体側面が解放されて足が出せる仕様であること」の3つ。国交省の法解釈と、我々の認識とを照らし合わせながら3つの条件を少しずつクリアしていきました。
実は、2017年の第1号機完成時点で法の解釈が変わってしまったため、自費で第2号機を再度作り直して現在に至ります。その分、プレート取得は喜びもひとしおで、有志連合の5社で試乗会を開催し、喜びを共有しました。取得実績はもちろんのこと、そこに至るまでの技術の蓄積自体が大きな成果でした。

eFalconから広がる地域の「ものづくりの可能性」

将来的な展望を教えて下さい。

eFalconは「ユーザーと共に育つスポーツEV」を目指して日々改良を進めています。直近では足回りを改造し、直進安定性を向上させました。
好きなように部品の交換ができる、車いじりが楽しくなる、いわゆる「大人のゴーカート」にしたいと考えています。例えば、「乗り味をカスタマイズするためにサスペンションを硬いものに変更する」などの調整をして、嗜好性の高い乗り物として楽しんでもらいたいです。
自動車の見た目をもつ側車付き軽二輪は、日本でeFalconだけ。街の電気スタンドにも対応しているので様々なシーンで乗っていただき、このEVにしかできない楽しみ方をお客様自身で見つけていただきたいですね。

さいごに、ものづくりの根底にある想いを教えて下さい。

eFalconの開発は、「挑戦心」「自分で考えること」「夢を持つこと」の大切さを社員に感じてほしいという理念のもと取り組み始めました。お手本が沢山ある環境で毎日決まったことを同じようにこなすより、夢をもってやりたいことをやる姿勢を見せたいと考えたからです。
中でも「ものづくり」は自身の仕事を実感しやすく、人にも仕事内容を説明しやすい。例えば、造り上げた実物を持って、父が子に「これは自分が作ったんだ」と伝えることができます。挑戦する姿勢を多くの人に見てもらい、「ものづくり」の魅力を発信することで、そういった仕事に関わる人のすそ野が広がっていけば嬉しいです。
地域の企業の方々も同様に、eFalconの挑戦を通じ、やれば形になることを知っていただき、ともに新しい挑戦をして地域を盛り上げていきたいと考えています。
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