INTRODUCTION

of corporate cases and initiatives

取組事例紹介

青木被服株式会社 × 株式会社丸五
PROFILE
(左)
青木被服株式会社 専務締役 青木俊樹 氏
1961 年にデニム製品・ユニフォームの受注生産を開始、国内を代表するデニムファクトリーとして定着。2010年デザイナー青木俊樹が独自の世界観を持つブランド「FAGASSENT/ファガッセン」をスタート、パリとミラノでメンズコレクションの発表を継続。近年ではB’z/ONE OK ROCK/長渕 剛といったアーティストのステージ衣装を制作する一方、青木被服では日常に寄り添うデニム製品を監修。

(右)
株式会社丸五 ウエルネス推進部 テクニカルチーフ 杉本桂二郎 氏
1919年、繊維と加硫ゴムの融合として地下足袋の生産を開始。信頼性の高い品質の地下足袋や安全スニーカーの開発に取り組む。足袋のワーク領域のリーディングカンパニーとして培った技術を活かし、祭り・スポーツから、日常でのトレーニングやリハビリテーションの場面までをカバーする事業を展開中。
インタビュアー・ライター:杉原未来
撮影:難波航太
ウェルネス&デザイン/1足から始まる組織力向上のストーリー
オープンイノベーションとは、外部の企業や研究機関と連携して研究開発や新規事業を立ち上げる手法です。顧客ニーズの多様化や生産サイクルの短期化といった現状を受け、オープンイノベーションの必要性は、ますます高まっています。
今回は、高梁川流域圏域内の企業同士が連携して商品開発を行った取り組みについて紹介します。

青木被服様と丸五様はコラボレーションして足袋シューズを作られています。コラボの経緯を教えて下さい。

青木
倉敷美観地区に新たな複合施設を作る「倉敷SOLA 立ち上げプロジェクト」で、丸五様へ足を運んでいたのがきっかけです。工場を拝見する中で「実験的かつ楽しく製作されている」という印象を持ち、「コラボレーションしたい」という気持ちが自然と湧いてきました。
また、パリで発表予定のコレクションがコロナの影響で停止していたこともあり、「国内に視点を置き、地域と連携したい」 と思っていた時期でした。
時代に左右されない価値あるものを作りたいと同時に、丸五様の「足袋で健康を守る」 という想いに、デザインで「驚き」「面白さ」を加えたいと感じました。

杉本
弊社では、「ウエルネス推進部」という新しい組織が発足した頃だったんです。そのため、足袋を世の中へ広めるために『コラボレーション』に注力したいと考えていました。
その時期に青木専務からお声がけ頂き、多方面で活躍されている青木被服様となら「良い商品・良い発信」が実現すると思ったのが始まりです。

連携をきっかけに結ばれる2つのこだわり

どんな商品にしたいか、ご両者の意見をどのようにまとめていかれたのでしょうか?

青木
せっかくコラボ商品を作るならばと思い切ったデザインを提案したところ、丸五様が寛大に受け入れて下さいました。
当時、丸五様の新商品であった「Tabirela MARY(タビリラ マリー)」を見た時、「エレガントで綺麗」という第一印象をうけ、この形を土台に新たな素材やデザインで作りたいと提案したんです。

杉本
当初、「期待に応えることができるのか?」というのが正直な気持ちでした。そのため、弊社が出来る事と出来ないことをしっかりと共有しました。その中で足袋作りのコンセプトに共感していただき、「健康を守ること」と「足袋の良さ」を理解していただきました。

商品の「こだわり」や「工夫」などを教えて下さい。

青木
コレクションで使うレベルの、「オーストリッチレザー(ダチョウの革)」や「カーフレザー(子牛の革)」といった特別な素材を使用しています。また、「置いてかっこいい足袋シューズ」を目指し裏地は赤色のカツラギを採用しました。
加えて、デニムブランドならではのこだわりで、リベットだけ通常とは違った工程で打ち込みました。丸五様が加工した靴の表面部分に、弊社工場でリベットを打ち込んだ後、丸五様が裏地をつけています。普通であれば最終工程でリベットを打ち込むのですが、その場合金具が内側で剥き出しになってしまいます。快適さを追求した点も、コラボ商品ならではの工夫です。
杉本
弊社のこだわりは、100年以上の足袋作りで培ってきた爪先の造形です。
海外メーカーの足袋型シューズは、日本人の足に馴染まない品がほとんど。弊社商品なら日本人の足にフィットする設計のため、足が地面をしっかり掴むことができます。「健康は足から始まる」といっても過言ではありません。足袋型シューズは長時間歩いても疲れにくくウォーキングも捗りますし、外反母趾の方にもオススメです。

課題を乗り越えるカギは「感謝」と「リスペクト」

連携する中で、どのような苦労や課題が生まれ、どう乗り越えていかれたのか教えて下さい。

青木
洋服のパターン、つまり「服を作る際の型」の変更はCAD上の作業です。一方で、靴のパターン変更=アウトラインの変更は「木型」を変更することになるため容易ではありません。初期段階の判断が非常に重要だったので、Tabirela MARYをベースに、何度も意思疎通を重ねました。
加えて、オーストリッチレザーを使ったTabirela MARYの製作には苦労しました。既存の形よりも鋭い印象を持たせるため、ミリ単位で「革の厚みの調整」と「革にあわせたパターンの調整」を丸五様で行ってもらいました。コラボ商品全ての木型を調整するのは難しいと丸五様は明示してくださったので、クラシックなものと挑戦的なもので2種類の商品が生まれ、結果的に充実したラインナップとなりました。
杉本
デザイン部分での木型調整で、婦人靴パンプスの命である「足の甲の見せ方」で悩みました。青木被服様が弊社の「健康を守る」 というコンセプトに敬意をもって下さり、足袋の包み込むような履き心地を残しながらもエレガントに見せるためVカットを採用しました。
何より苦労したのは、オーストリッチレザーを立体縫製せずに爪先を綺麗に仕上げる場面です。「素材が硬い!」と現場からクレームが出ましたが、最終的には現場の職人さんが革の厚みを削ぎ落として調整し、つま先の形成をやり遂げてくれたのです。挑戦的な企画が出来たのも皆様の協力があってこそと感じました。

コラボで得た「挑戦」と「ものづくりのあり方」

高梁川流域圏域内にある企業同士のコラボということで、どんな成果がありましたか?

青木
シューズの元となる木型や構造に伴う素材の使い方が勉強になりました。私は制作において「第一印象」を重視していますが、「負荷がかかる所、そうでない所の素材の使い方」を全て聞き、足を守る「理由あるデザイン」により近づいたと思います。
加えて、何より感動したのは、企画から生産という物作りのシステムの共有です。同地域の企業と生産体制や販売方法に至るまでを共有できたことは、運営方法やチームワーク含め大変参考になりました。

杉本
僕たちは企画に対する熱量が上がりました。僕は普段設計という立場で開発に携わっており、企画者・デザイナーの想いを大事にしています。珍しい素材使いやリベットの工夫についても同地域の企業とでしか実現しなかったと感じました。

さいごに、連携して成果が出た時の喜びや達成感などを教えて下さい。

青木
納得した商品ができても、お客様に着用していただかなければ製品は完成しません。お客様が喜ばれるのを見る度、丸五様とご一緒出来てよかったと感じます。特に、オーストリッチのMARYが出来たこと自体、丸五様のご理解があってこそです。様々な要望を寛大に受け入れて下さり、本当に有難く感じました。

杉本
コラボ商品の販売や、店舗を仕切らず隣同士に構えることで、双方のファンを交換する形にもなり、ファン層が広がりました。納得できる商品ができたのも青木被服様の「熱量」に背中を押していただいたおかげです。
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