INTRODUCTION

of corporate cases and initiatives

取組事例紹介

矢掛町地域おこし協力隊 カリム・エムディ・ジアウル氏
PROFILE
バングラデシュの植物博士。同国のラジヒャヒ大学にて、植物生理学、病理学、細胞遺伝学等の幅広い知識を修め、東京農工大学において博士課程を修了する。その後も複数の大学で研究を続け、岡山大学に籍を置き家族で矢掛に移住する。グリーンパパイヤ、ブラックベリー、ステビア等の栽培に取り組み、矢掛町地域おこし協力隊として様々なコラボレーション商品の開発に取り組む。
インタビュアー・ライター:杉原未来
撮影:難波航太
バングラデシュの植物博士が目指す岡山の観光農業
地域連携のカギは「親しみやすさ」と「データ」

カリムさんは様々な植物の生理学や病理学を修めている「植物博士」ですが、どうしてそうなろうと考えたのですか?

幼い頃から農業が身近な存在だったからです。バングラデシュの農村人口は全国民の約6割。植物や農業に関わりながら働きたいと考え、植物学の研究者になりました。

バングラデシュでも権威のある大学を卒業されて、祖国で安定した仕事もあったと思いますが、なぜ日本に来られたのでしょうか?

日本で研究することは私の憧れでした。バングラデシュには無い研究機器が日本では簡単に使えるからです。コンペティションで論文が認められたことをきっかけに、念願だった日本へ来ることができました。

その中でも、岡山県の矢掛町に来られた理由は何でしょう?

来日と同時期に結婚しましたが、岡山市内の大学で研究している時期に妻が日本にきてくれ、矢掛で英語の教員を始めました。矢掛の秋祭りに参加したことで地域の方の優しさや、気候・風土を好きになっていき、移住に至ります。移住のキッカケは妻がくれたのですが、結果的に研究も農業もできる絶好の環境が矢掛だったのです。

地域おこし協力隊になるきっかけはなんでしたか?

研究しているグリーンパパイヤやブラックベリーを「ビジネスとして成り立たせたい」と思ったことがきっかけです。今まで、研究の結果は論文で表すしかないという環境にいました。しかし、矢掛に来たことで「農業のビジネス化」を通し、実験結果を実証できると気づいたのです。そこで、政府や地域の力も借りてチャレンジしようと、地域おこし協力隊になりました。

地域おこしに必要なのは、「わか者・よそ者・くせ者」

地域おこし協力隊となった際に、地域の課題は何だと感じましたか?

若者の力が必要だと感じています。バングラデシュは若者が多い国で、どこに行っても若者の姿を見かけます。一方、日本の農業は特におじいちゃん、おばあちゃんの手で成り立っています。もっと若い方に農業に参加してほしいですね。バングラデシュから来た植物博士が農業もやっているとなれば、珍しく思い、若者にも関心を持ってもらえると思い活動しています。さらに、観光農業も盛り上げたいと思っています。矢掛はもともと観光の町。休日に家族が岡山市内からきて、新鮮な野菜、美味しい食べ物を楽しむ場所にしたいです。最近はユーロ圏やアメリカ圏からのお客様が増えています。グリーンパパイヤのようなトロピカルな作物があれば珍しがって観光に来てもらいやすいとも考えています。

カリムさんの農法から見える「人」と「自然」への大きな愛情

化学肥料、農薬を使用しないとお聞きしましたが、それはなぜでしょうか?

渡近年、多くの方がオーガニックを歓迎するようになりました。口に入るものですから、「安全第一」は当たり前です。コンポストを利用して、植物の残渣(ざんさ)や他の野菜の葉等を肥料にしています。それ以外に与えるとしたら牛糞くらいです。
ある時、埼玉のスーパーで私のグリーンパパイヤを販売した際、海外産のものも隣にあったのに、私のパパイヤは一週間足らずで売り切れました。一方で、海外産パパイヤは半値になっても売れなかったのです。それはなぜだと思いますか?

岡山県産ということで興味をもっていただけたのでしょうか。

それもありますね。しかし、一番は安全性かと思います。海外では農薬や化学肥料につき、何をどれだけ使っているか分からないため、消費者も不安なのです。バングラデシュでも、化学肥料・農薬を沢山使います。早く育てて、早く手元にお金が欲しいと考える方が多いのが現状です。
私の農法では自然由来の物を工夫して使い、化学肥料・農薬はなるべく使わないようにしています。パパイヤは病気も少なく、育てやすい作物です。

ビニールハウスさえも使っていないのはなぜでしょうか?

ハウスを建てるには「お金がかかる」という欠点があります。一般の農家さんでは、すぐに育て始めることができません。露地栽培(ろじさいばい)にすることで、誰もが「自分もパパイヤを育てられる」と感じてほしかったのです。販売したい人だけでなくて、自分で食べてみたいという方も沢山おられます。とにかく「ローコスト」「環境にも優しい」という点を意識しています。

研究者ならではの視点が連携のカギ
「観光」「健康」「農業」の3つの柱から生まれるワクワクする商品たち

様々なコラボ商品を数多く手がけていらっしゃいますが、どのように他者と協力していったのでしょうか?

こまめに自身の活動を発信していると、他者から商品開発の依頼をもちかけてくれます。
「バングラデシュから来た植物博士」だなんて話題になりやすいので、新聞やニュースにも沢山取り上げてもらいました。それによって、更に相手側から商品開発の誘いがかかるのです。
商品開発の際には、とにかく研究データを見せるようにしています。裏付けのあるデータを見せて相手に納得してもらい、栄養価・効能を伝えることで商品化へとつなげます。例えば、新見市の株式会社アーリーモーニング 宮本社長とのコラボでは、「データも材料もあるならすぐにでも商品化しましょう」とスムーズに話が進んだのです。

今後はどのような方とコラボレーションしていきたいですか?

私は、「さいごの場所は岡山県だ」と思っています。そのため、岡山県内の企業やブランドで、もし私のデータを見て一緒にビジネスをしたい、一緒に研究したい、という方がいらっしゃるならお互いに協力したいですね。加えて、若い人に就農してほしい。頭がいい学生は特に農業をやりたがらない傾向にあるのですが、農業をビジネスとして頑張る若い方や、岡山県内でチャレンジングに活動している企業と関わりたいです。そのような方といつコラボレーションしても良いよう、私はいつも研究と勉強を続けています。

さいごに、カリムさんの夢を教えて下さい。

まずは「岡山ブランドのパパイヤ」を確立することです。岡山は「晴れの国」だからこそ、立派なパパイヤを収穫することができるのです。今後は「晴れの国」の特徴を活かした岡山県ブランドとして、カカオやマンゴーも作りたいと考えています。そして何よりも「ローコストで環境にも優しい農業」は多くの方が参加できますし、喜んでくれます。矢掛を中心に岡山全体で「観光」、「健康」、「農業」という3つをキーワードに様々なコラボレーションを続けていきたいです。
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