INTRODUCTION

of corporate cases and initiatives

取組事例紹介

株式会社佐藤紅商店 代表取締役 佐藤拓也 氏
PROFILE
岡山県に移住後、2013年に高梁市の地域おこし協力隊に着任する。2015年に地域の宴会で赤い柚子胡椒と出会い、その美味しさに衝撃を受ける。ベンガラ(紅色の顔料)色の町並みが残る観光名所「吹屋ふるさと村」の新たな特産品として「吹屋の紅だるま 赤柚子胡椒」をリリース。現在「紅だるま」は県内中の特産品コーナーに並ぶ大ヒット商品である。
インタビュアー・ライター:杉原未来
撮影:難波航太
地域との親和が生み出した「可愛がられる大ヒット商品」のできるまで

県外から高梁市へ来られ、「地域おこし協力隊」としても「大ヒット商品の生みの親」としても大活躍の佐藤さんですが、岡山県にいらっしゃるまでの経歴を教えて下さい。

幼い頃から自然が好きで、生き物関係の仕事がしたいと思い、前職では大阪で観賞魚飼料の営業をしていました。しかし、都会に疲れて「自然と暮らしたい」と思い、岡山にきました。

なぜ岡山県高梁市に来られたのでしょうか?

妻が高梁市出身で、旅行で高梁市吹屋を訪れた際に「ここで暮らせたら最高だな」と、田舎暮らしのイメージが膨らみました。加えて、「ここにしかない魅力がある場所」で暮らしたいと思っていました。僕の脱サラは「仕事に疲れた」というネガティブなもの。だからこそ、移住して胸を張れる場所を探していて、それが高梁市吹屋だったのです。

岡山県高梁市で感じた地域とのご縁

そんな魅力ある高梁市で地域おこし協力隊になるきっかけはなんだったのでしょう?

職探しの中で市役所のホームページを開いたことがキッカケでした。高梁市での仕事をしらみつぶしに探したのですが、募集があったとしても業種が限られており、地方での職業選択の難しさを感じていました。そんな時、地域おこし協力隊の募集を見つけ、迷わず応募したのです。協力隊になってから聞いた話ですが、すでに決まっていた方が辞退されて、急遽席が空いたため再募集がかかっていたのだそう。これこそ「ご縁」だと思いました。

地域おこし協力隊となった際に、「地域の課題」は何だと感じましたか?

地域の課題というより、ヨソモノの目で見て「工夫次第で良くなるのに、もったいない」という点を多く見つけました。地域おこし協力隊の3年間はずっとトライアンドエラーの繰り返しで、楽しみながらもがいていました。協力隊の任期が終わる頃にやっと赤柚子胡椒に出会い、商品がヒットするまでは更に5年かかりました。「発見した課題を一気に解決した」わけでなく、商品の可能性を信じて少しずつ「販路拡大」と「増産」を繰り返していったのです。

佐藤さんが考え続ける「地域との親和性」の大切さ

地域おこしをすることに不安はありませんでしたか?

今まで会社員という安定した立場にいたので、任期が3年だけという不安がありました。しかし、一番の不安は地域に受け入れてもらえるのだろうかという点でした。

そんな不安の中、実際は地域の方としっかり協力し合って活動されていますが、地域に溶け込むため、どんな工夫をされたのでしょうか?

ゆっくりと地域と足並みをそろえながら事業を進めています。一番大切なのは、「儲け本意ではなく、暮らしやすい地域にするため」と地域の方々にわかってもらうこと。加えて、空いた時間や、利益はなるべく地域のためにも活用できるようにと考えています。地元青年団の宴会で赤柚子胡椒に出会いましたが、宴会に呼ばれるほど仲良くなったからこそ今があるのです。僕の場合は、じんわりと地域に馴染んでいくタイプ。その「スローペース」が功を奏したのでしょう。

地域との親和性をとても大切にされているのですね。長年吹屋に住んでいる方や、移住者の方や様々な方と、それぞれどんな連携をされているのでしょうか?

11月頃に 柚子の加工が始まりますが、スタッフの半分は移住者です。彼らは、ブドウやトマトの農家でもあり、本業の農作物は11月には仕事が終わるので、本業がひと段落した段階で手伝ってもらっています。
地域の方々と連携しているポイントは「柚子と唐辛子の栽培」です。自分で育てたものと地域の方々が育てて下さったものを両方使います。

大ヒット商品ならではの苦労は「需要と供給のチューニング」

地域と連携する中で苦労することは何でしょうか?

「需要にどこまで応えるか」が難しいです。おかげさまで紅だるまの注文は増えていますが、需要に応える原材料や人手が足りていません。加えて、柚子農家も高齢化していて、柚子を必死に集めているのが現状です。「もっと利益をあげて地域に還元したら良い」という考え方もあります。しかし、製品を沢山売るよりも、地域に向き合える最適解があるのではないか?と常に考えている状況です。
加えて、昨年は柚子が全国的に不作で苦労しました。柚子胡椒に使用するのは、約1mmの柚子の表皮部分だけ。こだわるが故に、香り良く美味しくできあがるのですが、大量生産はできません。職人が一つひとつ工芸品を作っているような感覚です。需要と供給の調整は本当に難しいです。

大ヒット商品を生み出す着想のヒント

そんな人気商品の商品開発における着想はどこから来るのでしょう?

「もったいない」という気持ちから着想を得ています。磨けば輝くものは沢山あります。例えば、柚子胡椒作りで皮を剥いた後の柚子の果肉部分は「ゆずニャーニャレード(佐藤紅商店開発の柚子マーマレード)」へ再利用。世界規模のマーマレード品評会に出品するなどして売り出し中です。
加えて、「くすっと笑えるコンセプト作り」を心がけています。「面白さ」をきっかけに話題が広がっていくことをイメージしながら商品開発をしています。

人気商品になるまで心掛けたことは何でしょう?

昔も今も、売ろう売ろうと営業しすぎないことを心掛けています。紅だるまができた当初は道の駅など5店舗に置かせてもらい、その翌年は更に5店舗だけ増やすというスローペースでした。最初の5店舗は協力隊時代に関係性を構築した道の駅で、そこからに良い評判が広がりました。少しづつ自分の心地よいペースで広げてここまできました。

さいごに、地域おこし協力隊になりたい方や、地域の特産品などで商品開発をしている方にアドバイスをお願いいたします。

「地域との関係構築」が一番大切です。加えて、「商品に物語性やブランディングも大切ですが、あまり固く考えずに0円の物に100の価値を加えて売る程度の小規模で良いから、自分の武器になる商品を作ってみる。」全てこれに尽きると思っています。例えば、ラベル作りの段階で納得できず、いつまでも商品がリリースできなければ本末転倒です。どんな企画でもトライアンドエラーの繰り返し。先ず「世に出すこと」を意識してみて下さい。
OTHER

corporate cases and initiatives

その他事例

↑pagetop