INTRODUCTION

of corporate cases and initiatives

PICK UP 取り組み事例紹介

MATSUO SHIGERU
医療の知見×最先端のAI予測技術の力で
「予防医療の社会実装」に挑む

「病気にならない人を増やしたい」。その思いが生んだ「医療×IT」の強力なタッグ

NECソリューションイノベータ様は、倉敷中央病院様と共同で、生活習慣病の発症リスクを予測するAIモデルを開発されました。そのきっかけを教えてください。

私は長年、日本電気株式会社(NEC)で電子カルテの導入をはじめとする医療事業に携わってきました。現在はグループ会社であるNECソリューションイノベータ株式会社で、ヘルスケア事業に携わっております。目指しているのは、「自分らしく生きる。誰もが病気にならない世界を創る」ことです。現在この国の国家予算117兆円のうち、なんと48兆円も医療費に使っています。ますます少子高齢化が加速し、医療を必要とする人が増えていきます。しかし一方で、医療資源には限りがあります。このままでは、この国の素晴らしい制度である国民皆保険制度は、とても維持できません。日本は今、そんな危機的状況にあるのです。
この国の医療の状況の深刻さを、医療に対する熱い思いとともに私たちに教えてくれたのは、倉敷中央病院の山形先生(現総院長)でした。「このままでは、日本の医療は続かない。もっとみんなが自分の健康に気を付けてくれたら、本人は楽になるし、病院側も提供する医療で患者の皆さまを治してあげられるし、国の医療費負担も抑えられる。だから、もっと予防医療・先制医療に力を入れなければならない」と言われたのです。日本を代表する高度な医療を提供する医療機関の代表者となる山形先生の思いと言葉の重みに心を打たれ、私たちの得意分野であるITの力で支援したいと考えたのです。

「健診を受けて終わり」にしない。4年後のリスクをAIで予測する

どのような予測AIモデルを開発されたのでしょうか?

開発したのは、定期健康診断の結果から、糖尿病、動脈硬化、急性心筋梗塞など、18種類の生活習慣病に関する4年以内の発症リスクが分かるというAI予測モデルです。日本には健診という良い制度がありますが、「受けて終わり」にしていませんか? その健診を、もっと価値の高いものにして、自らの健康状態を意識し、気付いていただきたい。そこで、私たちは、この「健診結果」に着目しました。私たちが開発したAI予測モデルを搭載した健診結果予測シミュレーションを活用していただくと、健診を受けるだけで、将来の健康リスクが「見える化」されるというだけでなく、「どの生活習慣を見直すことが効果を出しやすいか」といったアドバイスや、見直した場合の疾病発症リスクの予測もできるのです。健診結果を使うだけですので、利用者の時間や費用の負担も抑えることができます。
このAI予測モデルは、倉敷中央病院や同付属予防医療プラザの医療者の皆さまと、NECグループの中でもトップレベルのAI技術者が、それぞれの専門技術や知見を結集することで開発が可能となりました。さらに大変役立ったのが、同病院が保有する匿名化した約45万人のカルテと、予防医療プラザが保有する匿名化した約10万人分の定期健診のデータです。地域からの信頼が厚い病院だからこそ、「健診時」から「病気になった時」、そして「治ってまた健診に来られた時」の連続データが集まります。こうしたデータは教科書データとして生かされ、将来の健康リスクの「見える化」開発に必要不可欠なものとなりました。

「早期発見」ではもう遅い。予防医療の基本は“予測”の時代に

「予防医療の基本が“予測”になる社会」の実現を目指しているそうですね。

予防医療の基本は「早期発見、早期治療」という考えが一般的だと思います。でも、早期発見という言葉は、「病気になってしまっている状態を早く見つける」ということではないでしょうか。それが、AI予測モデルの誕生によって、「病気になる手前」でアクションを起こせる時代になれるのではないかと考えています。
本音を言えば、「そんな高度なAI予測モデルが、本当に出来るのだろうか?」と、最初は思っていました。しかし、倉敷中央病院及び同予防医療プラザの先生方と当社のAI技術者たちが、侃々諤々(かんかんがくがく)熱い思いを持って鮮やかに予測モデルを作り上げてくれました。病院の先生方には、超多忙であるにも関わらず快く医療の知見を提供してくださいましたことに、心より敬意と感謝を申し上げます。これからは、このツールの存在をたくさんの人に知ってもらい、実際に使っていただくために、私たちが力を尽くす番だと思っています。
山形総院長が以前話されていたのです。「もっと早く来てくれたら助けられたのに…という命をたくさん見てきた。そんな人たちが、もう少し早く気づいてくれる世の中にしないと、救える命も救えない」と。AI予測モデルを活用した健診結果予測シミュレーション(※)は、企業や自治体、健診センターなど、すでに約20万人もの方々に利用されています。「早期発見よりも、もっと早く」という、理想の予防スタイルのお手伝いができつつある手応えを感じています。
(※)NEC健診結果予測シミュレーション 
https://www.nec-solutioninnovators.co.jp/sl/healthcheckup_sim/index.html

地域での協業に必要なのは、仲間を増やし、「地域の力」を育むこと

クロッシングフォーラムに参加した感想を教えてください。

今回のフォーラム全体の内容を考えると、私が掲げる「医療」というテーマは、他のテーマ群と比べると少し異質に思えて、最初は不安でした。でも、当日は会場も満席で、トークセッション終了後も多くの方とのご挨拶や議論ができて、予想以上の反響が得られました。このフォーラムをきっかけに、県内の3つの大学をはじめ、異業種の方々との新たな連携も始まりつつあります。
異業種が協業する際に大事なのは「継続すること」だと思うのです。交付金をもらって始めてみたものの、お金がなくなると取り組みも終わるパターンが多いですから。私は、継続して自走していくためには、「地域の力」がとても大切だと思います。予防医療の話でいえば、「みんなが自然に、気が付いたら健康になっている」という状態を作って、一緒に取り組み続けられる仲間を、地域の中に増やしていくことが大事なのではないかと思います。
私たちは、このフォーラムをきっかけに知り合えた岡山県や倉敷地域の方々と、「もう少し意識を変えて、もう少し病気の予防に取り組む」という目的に共感していただける仲間を増やし、その仲間たちとともに連携の輪を広げていきたいと思っています。

この地域の恵まれた医療環境を守り続けるために、私たちができること

倉敷地域に住む方々に、伝えたいことはありますか?

私は、倉敷地域に対して、高度な医療施設に恵まれ、多くの産業もあるなど、この地域の中で完結できる魅力的な生活圏という憧憬を抱いています。また、フォーラム後の懇親会で、「同郷」という共通点で、業種も専門領域も異なる方々が熱い思いをもって交流を深めておられる姿に、この地域の強固な結束力を感じました。
一方で、岡山県の健康診断受診率が47都道府県の中で下から2番目という低さであり、倉敷市は県内でも健診受診率が低いと聞きます。ぜひ、皆さまお一人おひとりが、「医療資源は有限である」ことについて、お考えいただきたいと思います。「医療資源」というのは、具体的には、医療費のほかに、医療従事者の負荷、医薬品や医療機器・材料といった限りあるリソースのことです。身近に倉敷中央病院のような「健康の守り神」といえる存在があっても、これから少子高齢化が進み、医療の利用量は増えていきます。もっと多くの市民の方に健診を受けていただき、ご自身の健診結果を理解して行動変容していただけると、医療費も医療資源もどちらも適正化できるはずです。この地域の充実した医療の恩恵をいつまでも受け続けられるように、まずは一人でも多くの方が、「自分の健康を意識する人になる」という形で、この地域の結束力を発揮していただければと思います。
持続可能な社会のために地球資源を大切に使うエコ活動と同様に、限りある医療資源を大切に使い有効活用していく、「医療のエコ活動」という取り組みがあります。私たちはこの地域の方々とともに、「自然と」「気が付いたら」を実現できる健康応援活動を起こし、フォーラムを通じてお知り合いになれた方々と、医療のエコ活動を共にしたいと考えております。
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