岡山県里庄町の岡山手延素麺株式会社は、麺を束ねる結束テープに寒天を使った麺の商品化のためのクラウドファンディングを2021年夏に行い、目標金額を達成しました。
そうめんなどの乾麺を束ねる結束テープは紙やプラスチックが一般的ですが、茹でる際にテープを外しにくいという顧客からの声があったほか、麺を茹でるたびに紙やプラスチックのゴミが出てしまうという問題もありました。
寒天でできた結束テープを用いることで、結束テープは熱湯ですぐに溶け、テープを巻いた状態のまま麺を茹でることが可能になったため、調理が楽になり、ゴミの削減にもつながるということです。
乾麺の顧客の高齢化が進み、より手軽な調理に対する要望が高まっているのに加え、SDGsなどで環境問題に対する関心も強まる中、商品化の取り組みは好評を博し、クラウドファンディングの目標金額は開始から4日での達成となったようです。
今回、寒天の結束テープの開発にあたっては、寒天を使った研究開発に取り組む長野県の伊那食品工業株式会社と協力し、商品化を実現しました。伊那食品工業は寒天の加工フィルムの活用に約30年前から取り組んでおり、食品用途で複数の実績があります。
一方で、麺用の結束テープとしての用途は溶けやすくするための調整に難しさがあり、これまで定着には至っていませんでしたが、今回の連携が開始してから改良を繰り返し、商品化が実現したとのことです。
「調理の手軽さ」と「ゴミの削減」という2つの課題を解決するために、寒天という素材は最適解に感じられますが、これも、既存の発想や自前のアイデアの枠を超えた社外連携があったからこそなしえた事例と言えるのではないでしょうか。
加えて、今回の商品化にあたっては、製品化のための事業支援にクラウドファンディングというオープンに協力を募る手法が取られています。
クラウドファンディングとは、インターネットのサイトなどで起案者がやりたいことを公表し、そのプロジェクトに賛同してくれた人から広く資金を集める仕組みです。欧米では歴史のある資金調達の手法ですが、日本では2011年の東日本大震災の災害復興支援が契機となり、注目が高まってきたと言われています。
現在は、民間事業者が運営するクラウドファンディングサイトも複数存在し、一般の事業者でも広く賛同を得られるような目的を発信できるプロジェクトであれば、資金調達の手段として活用しやすくなっています。
このように、商品開発だけでなく、資金調達に関しても自前主義や既存の関係に頼るのではなく、よりオープンに連携する方向へ変化してきています。あらゆることに制限を取り払い、実現したい目的に向けて、不足するものは社外に目を向けて補う姿勢が重視される流れは、後戻りしないものだと感じます。