新型コロナウイルスの影響で鉄道の利用者が減る中、JR西日本岡山支社は、パンの県内製造出荷額が1位で「パンのまち」総社市の、人気のパンを在来線普通列車の空きスペースで輸送する実証実験を行いました。
JR、総社市商工会議所、ヤマト運輸が共同で企画し、2月17日に行われた実証実験では、総社市内のパン店から岡山駅構内の店舗まで、伯備線普通列車で届けられたということです。
今回は一般販売はされなかったものの、今後参加するパン店を増やして実験を継続し、事業化に向けて進めていく計画です。
今回の連携は、利用者数が減っている普通列車を貨客混載とすることで輸送の効率が上がるというJRと、できたてのパンを普段買いに来られない人にも届けて、総社のパンのおいしさを知ってもらうという総社市やパン店の、それぞれにメリットがある連携になっているのではないでしょうか。
JR岡山支社では、普通列車や特急列車のスペースを利用して地域の特産品を運び、岡山駅で販売するという実証実験を2021年から行っていて、備中高梁駅からの野菜、鳥取県の米子駅からのカニに続く、3回目の取り組みとのことです。
コロナ禍という制約を逆に活用した発想で、オープンイノベーションによる地域活性や新たな収益源の確保につなげようとする興味深い事例です。
イノベーションに繋がるようなアイデアを生み出すには、自由であることが大切だと一般的に考えがちですが、創造プロセスの研究によると、斬新なアイディアは完全に自由な状態よりも、一定の制約を設けた方が生まれやすいということが明らかにされつつあります。
たしかに、何かを考えるときに、「何でもいい」と言われると困ってしまう場面はよくあります。選択肢が多すぎるがゆえに、本当に重要な事柄に集中できず、アイデアがただの思いつきに留まってしまいがち、ということのようです。
過去に当たり前だった事柄に制約が多くなってしまった状況の中で、ここ数年の間で実際に多くの産業が形を変えていきました。
人、モノ、金、情報の流れなどの観点で、自社が当たり前に取り組んでいる事柄に仮に大きな制約を設けてみたら、どのようなやり方をするか?「制約」をテーマにアイデアを考えてみるのも良いのではないでしょうか。